発行所 山と渓谷社
発行年月日 2008.08.10
価格(税別) 1,100円
● この雑誌の白眉は平野勝之さんのエッセイ。69歳の女性サイクリストの話。
若くして夫を失い,自身も片脚を骨折。2本ある骨の2本とも折れたらしい。
そうなると,なかなか難しいんだそうだ。一度は諦めて自殺まで考えたけれども,自転車療法(?)で治るという話を聞き,東京の外科医を訪れた。
で,治ったよ,と。
● このあたり,本当なのかねと眉に唾をつけたくなるんだけれども,そういうことのようだ。自転車を漕ぐことで難しい骨折を克服することができた。
その後,彼女は徐々に走行距離を延ばしていった。四国遍路を自転車でなしとげ,ついには京都の自宅から北海道までやってきた。
● 平野さんとは襟裳岬で出会っている。ツーリングで辛いことは?と訊ねると,ない,との返答。骨折のときの絶望感に比べれば何でもない,と。
● 何だか,できすぎた話のように思えるんだけど,でも,いい話には違いない。
編者 河西啓介
発行所 ボイス・パブリケーション
発行年月日 2016.10.20
価格(税別) 1,111円
● 表紙は橋本マナミ。彼女はミニベロ数台を所有しているらしい。といって,ミニベロに乗れば色っぽくなれるというわけではもちろんない。
● 自転車に乗ってる美人さんが数人,登場。ということはつまり,これは男性に訴求している雑誌ってことでしょうね。
いくつか転載。まず,シクロクロスのプロである武田和佳さん。
私は身体が小さいので,パワーでは不利だけど,小さいなら小さいなりの戦い方がある。それがわかったので,世界を相手にどこまで食い込めるか,どんどんチャレンジしていきたいです。
次に営業職の東海林ゆいさん。
これまで大変だった営業の移動が,自転車があると楽しくなるんです!(中略)いままで単調でツラかった営業の移動が楽しく充実したものになりました。
● 東海林さんは折りたたみ式のミニベロ(ブロンプトン)と電車移動を併用しているらしい。
自転車へ誘うための雑誌だから,いいことしか書いてないんだと思うんだけど,単調さに穴を開ける程度の効果はあるのかもなと思う。
● 羽田圭介さんの連載エッセイも。次のような一文がでてくる。
しかしサイクリストが実際にやっていることといえば,家から近所の商店街に自転車で出かけるのと同じ小さな移動が,延々と続いているだけだ。(中略)それを続けていればいつの間にか一〇〇キロなど走っているし,都道府県をまたぐことにもなる。
これは一面の真理でしょうね。一面のという限定を付けるのは,量を重ねると質的転換が起こるだろうからだ。「近所の商店街に自転車で出かけるのと」は違ったトラブルも起きるだろう。走る時間帯も変わってくる。天気も。
ではあっても,国内を走る分には,さほどに大変なこともないのじゃないかとは思う。ぼくのささやかすぎる経験からしても。
● 個人経営の自転車屋さん3人の鼎談もあり。メーカーからショップに来る段階では,グリスをケチっていたり,組み付けがいい加減だったりということもあるらしい。
しかし,ショップによってはその組み付けが面倒だから,メーカーにやってもらった方がいいといったこともあるようで,なかなか一筋縄ではいかないようだ。
量販店の問題も指摘されている。カンセキが展開するネオ・サイクリスタあたりが量販店の代表なんだろうかねぇ。が,都会ならしらず田舎だと,わずかにある自転車屋もいつまであるものやら不安を抱かせるんだよね。