2015年8月18日火曜日

2015.08.10 私家版「ツール・ド・栃木」 5 大田原(黒羽)~那須~那須塩原~矢板~塩谷

● 5時に起きた。まず,やっておきたいことはパンクの修理だ。
 昨日は,烏山から先,何度も後輪に空気を入れながら,だましだましここまで来た。パッチがきちんと付いていなかったと思う。別の箇所が小さくパンクした可能性もある。
 ので,まず,パンクを修理したい。チューブを引っぱりだしたところ,昨日貼ったパッチはしっかり付いていた。どこか別のところが漏れている。
 となるとバケツに水を入れてどこが漏れているのか確認しないといけない。バケツを借りようと思ったけど,宿の人が誰もいない。

● 30分ほど空しく過ごしてから,借りることができた。結局,しっかり付いているパッチの縁から空気が漏れていた。
 いったん貼ったパッチを引き剥がして,小川のカンセキで買っておいたパッチをあてる。ダイソー製品とははっきり違う。扱いやすい。きっちり付いてくれるという安心感がある。
 気泡が出なくなったことを確認して,タイヤの中にチューブを押しこんだ。

● 宿の食堂で朝食。宿を経営していくうえで,一番大変なのは朝食の用意じゃないかと思う。業務用の漬け物や生卵,冷凍の鮭の切り身を仕込んでおいて,それを出すことになるのは仕方がない。
 暖かいごはんと味噌汁があるのだ。ぼく的には充分だった。

● オーナーの男性は,ゴルフや鮎釣りが好きらしい。オーナー主催コンペのポスターが貼ってあった。鮎の友釣りに来るお客さんもいるようだ。
 ひょっとしてオーナーは同好の士を募って,そういう遊びがしたくて,この宿を始めたのか。
 朝食付きで4,320円。ありがたい宿だった。

● 昨日はついに誰とも喋らなかった。「大人の遊びだ。本気でやんなきゃみっともないだろう」とメールをよこしたヤツはいたけれど。
 こんなことで,誰かに読んでもらえるような文章を書けるだろうか。

● ここまで来ると雲巌寺が多少は近くなる。那須に向かう前に,雲巌寺まで足を伸ばしてみるか。
 が,見送ることにした。今回はとりあえず栃木県を一周するけれども,その後,“栃木県秘境探検ツァー”をやってみたいと思っている。
 雲巌寺はそのときに馬頭の大山田からアクセスすることにする。

● というわけで,294号を北に。
 じつはこの道は一度,徒歩で通過している。もう12,3年も前のことだ。黒羽の明王寺を一番札所とする那須三十三所観音霊場というのがあって,これを歩いて廻ってやろうと考えたのだった。
 仕事や職場に厄介なものを抱えていると,そういうことを思いつく。で,実際に始めたものの,3分の1も廻ったところで中断し,ずっとそのままになっている。

● ともかく歩いているのだ。が,既視感はない。自分の足で歩いているのに,風景は記憶からとんでいる。歩いたということを憶えているだけだ。
 余笹川を渡り,黒川を渡って,「道の駅 東山道伊王野」に着いた。うーむ,この道の駅も歩きのときに来ているのだけど,まったく記憶がつながらない。初めて来たような気がする。
 ともあれ,今回はここが北端となる。
 
道の駅 東山道伊王野

● 伊王野って惹かれる地名だ。ひとつは文字の字面。もうひとつは言葉の響き。
 自販機でコーラとウーロン茶を買って,ベンチで休みながら,すっとここに座っていたいと思った。サドルに座るのはイヤだけど,このベンチならずっと座っていたい。
 泊まりで自転車ツァーに出るのは今回が初めてだ。2日目になると,ケツがサドルに乗るのをいやがるようなのだ。何度もサドルから離れたがるのだ。

● でも,それもじきに消えた。普通に乗れるようになった。老体ながら自転車に乗れる身体になってきているのかなと,少なからず嬉しかったりする。
 それと,パンクが完全に直ったことの安心感。心が安らかになりますな。

● 294号を少し戻って,県道黒磯棚倉線に入った。何度かのアップダウンを繰り返して,那須塩原市鍋掛を通過した。那珂川を渡った。那須塩原市も今回はこれだけ。いずれ同市をちゃんと走る機会があるだろう(と思いたい)。
 このドッペル君,前ブレーキがほとんど効かないので,急な下りはけっこう怖い。

● 再び黒羽に入ったようだ。トウモロコシ畑が広がって,酪農家が多いエリアを通過し,羽田地区を通る。自販機でカルピスソーダを身体に入れ,登っては降り,大田原市街に入った。
 サンクス浅香店で小休止。“ガツンとみかん”を2本食べてしまった。

● このあたりは問答無用で走り抜ける。那須学園を右手に見ながら峠を越えて,矢板市街に入る。セブンイレブン矢板中店で,お茶と念願のガリガリ君スイカにありつけた。
 よくぞここまで来たものだと,少々の感慨がある。先ほどまでは伊王野にいたんだもんな。

● 明治期の那須野が原開拓に功績のあった矢板武の記念館がある。ここに立ち寄る機会はこれまでに何度もあったんだけど,いつでも来れると思って,行かないまま今日になった。
 今回は寄っていくつもりでいた。が,月曜と火曜が休館日。となれば是非もない。先に進もう。

● 今,走っているのは国道461号。地図には日光北街道とも記されている。塩谷を横断して鬼怒川に至る道路だ。この道路を走って今市に至り,大谷川左岸を日光まで走って,細尾峠を越えて足尾に出る予定だ。
 ときどき,まったく車が来ない時間ができる。シンと静かになる。異次元ポケットに落ちたような気分になる(落ちたことはないけど)。

● ここでも登って降りを繰り返し,塩谷町田所に着く。セブンイレブンがあったので,ここでも氷菓と水を補給する。
 あたりまえだけれども,暑い。ただ,少し前までの重さを伴うような暑さではなくなっている。かすかに秋が混じりだしているように思われる。

● とはいえ。素足にサンダルで走っているんだけども,足の甲が日焼けしてヒリヒリ痛い。アホですな。普通はソックス+靴だよね。日焼け防止と安全と力の有効活用を考えれば,当然そうなる。
 ところが,そのいずれも考えていない。とにかく楽な格好を選んだんでした。だいたい真夏にソックスをはいて靴で足を覆うなんてねぇ。足がブヨブヨになりそうだぞ。

● ここまで快調に走ってきたが,バンッと大きな音がして後輪の空気が抜けた。イヤな予感。前にチューブをバーストさせたことがある。またかと思った。
 荒川が近くだったので,堤防の日陰のところで作業を開始。何かを踏んだらしかった。大きな裂け目ができていた。タイヤにも。
 携帯用のポンプで入れているんだから,暑さで膨張してタイヤがバーストするほどの空気が入るわけがなかったのだ。
荒川堤防でパンク修理

● 普通,こういうツーリングのときは,パッチでふさぐんじゃなくて,替えチューブを持っていってチューブを交換する。が,ドッペル君はクイックリリースではない。しかも,前輪を受けるフロントフォークにつけられた凹みの径が左右非対称で,一方はトンカチで叩いてやらないと入らなかった。
 前輪を外すときも同じだろう。素手で外せるとは思えない。となると,車輪の着脱を伴うチューブ交換は避けたいわけだ。あるいは,チューブと一緒にトンカチも持参するか。

● 昨日に続いて,パンクを修理しながらの大休止となった。何だかなぁ。
 穴をパッチでふさいで空気を入れてやると,とりあえず抜けることはなさそうだった。とにかく,走ることはできそうだ。進むか退くか。進むことにする。

● 道路沿いに中華料理屋があったので,入ってみた。ちょっと遅めの昼食だ。
 夜は飲み屋になるらしい。っていうか,夜がメインの店のようだ。オバチャンが3人でやっている。常連さんのお父さんが数人,ひょっとしたらビールなんぞを飲んでいるのか。ご機嫌でオバチャン相手にヨタを飛ばしていた。いいなぁ。
 って,おまえだって自転車に乗って好きなことをしてるんじゃないかと言われますな。

● ラーメンと半チャーハンのセット(650円)を注文。スイカ食べますかと,スイカのサービスも。ガリガリ君スイカは大好きなんだけど,本物のスイカを好んで食べることはない。が,こういうとき,断れる人はいないんじゃないか。
 いただけば,食べないわけにはいかない。生スイカを食べるのはひょっとして四半世紀ぶりだったかも。で,食べてみたらけっこう美味しい。スイカを食べないできたなんて,人生を損したとは思わなかったけど。

● 昨日の烏山駅前のうどん屋もそうだったし,「K」もそうだったし,ここもそうなんだけど,オバチャンはひっきりなしに喋っている。喋りながら仕事をする。喋りながら手は動いているのがすごい。
 マルチタスクができるんだな,女の人って。男はシングルタスクでしょ。喋るのと仕事するのを同時にこなすなんて想像もできない。
 だから,“喋っている=サボっている”という捉え方になる。それを女にも押しつけるというか,そういう評価軸を持ってしまう。でも,これ,基本的に間違いかもしれないよねぇ。

● スイカもご馳走になったので,千円札を出してお釣りは受け取らないつもりだった。ちょっとカッコつけてみようかな,と。
 でも,そうはさせてもらえなかった。

● また後輪の空気が抜けていた。やはり,と思った。そういう気はしなくもなかったんだよ。さすがに,引き返すことにした。「ツール・ド・栃木」はここで断念。
 先ほどの堤防まで自転車を押して歩いた。中華料理屋に入ったのはラッキーだった。あのまま走っていたら,どこまで行っていたことか。

● 別の箇所に穴が空いていた。パッチでふさいだんだけど,たぶん,走ればまた別のところが空くんだろう。とりあえず,これで矢板まで走ろう。矢板に置いて電車で帰ろう。明日,取りに来よう。
 幸い,矢板まではもってくれた。ファミマでガリガリ君ソーダとお茶で涼をとって,カインズホームを覗いた。カインズホームを出るときにはだいぶ後輪の空気があまくなっていた。

● 以前,行きつけにしていた飲み屋に寄った。「本気でやんなきゃみっともないだろう」とメールをくれた友人が付き合ってくれた。ほとんど唯一といっていい友人だ。
 けっこう飲んだ。自転車はここに置かせてもらった。